THE WOOD

✷グッドデザイン賞/受賞
✷ウッドデザイン賞/受賞
✷COFI中層木造建築デザインアワード2018/受賞
✷木材活用コンクール「ネクストイノベーション賞」/受賞
サステナブル建築物等先導事業(木造先導型) 平成28年度報告書

□主要用途:事務所+共同住宅
□建設地:東京都大田区蒲田
□最高高さ:19.539m
□建築面積:126.00㎡
□延床面積:705.46㎡
□撮影:海老原 一己 / GlassEye Inc.

本計画は、RC造4階建て事務所ビルの建て替え計画です。

主構造を木造とし、新築建物重量を既存建物重量以下になるように設計することで、既存の場所打ちコンクリート杭を利用出来るのではないかと考えました。

新築建物は、主構造(3〜6階)を木造軸組構法、地下1階をRC造、ロングスパンの求められる地上1~2階事務所を鉄骨造とし、軽量な外装材の選定、階高を抑えた断面計画などにより、建物を軽量化しています。

これにより、新築建物は既存(496㎡)に対して、約1.4倍(705㎡)の床面積を確保していますが、建物重量は42t削減することが出来ました。

既存建物の解体後、既存杭の調査を行い、全9本の健全性が確認出来たため、予定通り既存杭の上に新築建物を建設しています。

都市における木造の積極的な採用、建物軽量化による既存杭の利用といった取り組みが、同規模ビルの建て替えにおけるモデルケースとなってゆくことを期待しています。

既存杭の利用

新築建物重量を既存建物重量以下に設計し、既存の場所打ちコンクリート杭を利用します。

(既存建物:昭和61年竣工、検査済証交付済)

平成13年の建築基準法改正により、木造による高さ制限、延べ床面積制限が撤廃され、木造による大規模建築物が可能となりました。

その後法整備が進み、実大実験による構造性能の検証などが行われながら、技術開発が進んでいますが、木質構造による大規模建築物は、まだまだ普及しているとは言えない状況にあります。

そのような状況の中、2018年10月、木造軸組構法による6階建て複合ビルが竣工しました。

この建物は、「平成28年度 「サステナブル建築物等先導事業」に採択されています。

✷2018.08.08 日刊木材新聞18593号 掲載 
✷2018.10.10 日刊木材新聞18632号 掲載 
✷2018.10.11 日経アーキテクチュア 掲載
✷2018.10.12 日刊建設工業新聞19525号 掲載 
✷2018.10.16 住宅新報3587号 掲載 
✷2018.11.07 国産材活用による地方創生トップセミナーin名古屋 講演
✷2018.11.13 住宅新報3591号 掲載 
✷2019.02.26 中大規模木造建築物普及シンポジウム 講演
✷2019.04.08 週刊ビル経営1097号 掲載
✷2019.05.29 国産活用による地方創生トップセミナーin北海道札幌市 講演
✷2021 5月号 新建築 掲載

平面計画

設計条件は、地下1階及び1〜2階を事務所、3〜6階を共同住宅とするものでした。 ロングスパンの求められる事務所は鉄骨造とし、間仕切りなど、比較的壁の入れられる共同住宅は木造軸組工法を採用しています。 木造部分は1時間耐火が求められますが、北側開口部前の構造体は長期荷重を負担させない設計とし、間柱及び筋交いを現しとしています。

耐火 木現し

断面計画

建物を軽量化するため、木造部分最大4.7mスパンに対し梁成を270mmに抑え、二重床のふところを最小限として、階高を3mに、床厚を700mmに抑えています。 外装材は屋根・外壁共にガルバリウム鋼板とし、軽量化を図っています。

立面計画

計画建物は耐火建築物です。 (地上1〜2階:2時間耐火、3〜6階:1時間耐火) 北側(道路側)外観は桧板を貼り(日本木造住宅産業協会、耐火個別認定)、見た目にも温かみのある外観としています。 木造部分3〜6階は1時間耐火が求められますが、北側開口部の筋交い及び間柱は、長期荷重を負担させない設計とし、構造体を現しとしています。

構造概要

木造 鉄骨 混構造

1階から2階は鉄骨造、3階から6階は耐火木構造の6階建てビルを実現します。 既存杭を利用した設計を行います。

「コンクリート+鉄骨+木」による多様な素材の設計を各階の耐火仕様を満たすことで、実現しています。

木造ブレース接合部の施工簡略化のために、長期ではブレースを除外して解析を行い、地震時の応力だけを負担する解析を行っています。

既存場所打ち杭の調査

既存建物解体後、以下の調査を行い、全9本が再利用可能であることを確認しました。

(1)健全性調査
   ①杭頭目視調査:杭径、主筋本数、かぶり厚さ測定、杭頭鉄筋の腐植度確認
   ②インテグリティ試験(IT試験):杭長、杭体の連続性、欠損等の有無を調査

(2)耐久性調査
   ①圧縮強度試験:杭のコンクリート強度確認
   ②中性化試験:杭コンクリート中性化深さの確認
   ③杭主筋鋼材試験:杭主筋引張強度の確認

計画概要

工事名称:(仮称)東京発条製作所本社ビル新築工事

事業主体名:株式会社アライホールディング
主要用途:事務所+共同住宅
建設地:東京都大田区蒲田
工事予定期間:2017年12月〜2018年9月
主構造形式:地下1階:RC造、地上1〜2階S造、地上3〜6階:木造軸組構法

主要仕上材料
外部
屋根:ガルバリウム鋼板 t=0.4 横葺き
外壁:ガルバリウム鋼板 t=0.4 横葺き、桧 t=15 防腐剤塗布
軒裏:桧 t=15 防腐剤塗布、ケイ酸カルシウム板 t=8 VP

内部
天井:デッキプレート塗装、不燃木材 t=15、EP
壁:塗装、不燃木材 t=15、EP
床:フローリング、タイル

最高高さ:19.539m
建築面積:126.00㎡
延床面積:705.46㎡

撮影:海老原 一己 / GlassEye Inc.